top of page

形成外科の観点から

ケロイド・肥厚性瘢痕~形成外科医の立場から

ジョイアクリニック京都 院長 林寛子

「ケロイドってどういうものですか?」という質問に対して私はよく「火山のマグマ」に例えて説明します。身体の中にマグマの様なものがあって、もともとニキビや予防接種のあと、虫刺されやピアスの小さい穴だったところから噴火が始まり溶岩が流れ出すように赤く盛り上がって拡がってしまう。そのようにして出来た活火山を「真性ケロイド」と言います。そのマグマの様なものを持つことを「ケロイド体質」と呼びます。
活火山になったケロイドは痛くて痒くてとてもつらいものです。このつらさはなかなか他人には理解してもらえないので、一人で悩んで我慢されている方が少なくない。更に病院を受診しても「治らない」と言われ絶望的な気持ちになってしまい当院の「ケロイド110番相談窓口」に辿り着いた方を今まで数多く診てきました。
そのようなケロイドで悩まれている方々に希望を持って頂きたくてこのサイトを立ち上げることにしました。 
痛くて見た目も悪くてつらい活火山のケロイドも、適切な手術と放射線治療。そして術後の丁寧なケアがあれば休火山になってくれるのです。是非勇気を持って専門医を受診してみて下さい。見た目も目立たなくなり、痛みから解放され、白くて平らな状態を手に入れることは決して夢ではないのです!

「真性ケロイド」の治療:ケロイド体質の方の場合

真性ケロイドの術後には放射線治療が必須です。マグマを持っている体質なので、手術でケロイドを切除するだけではほぼ100%再発します。むしろ噴火口を切り開くようなもので、かえってケロイドが拡大増悪することも少なくありません。
放射線治療を併用することでケロイドの再発は強力に抑制され、その効果は一生涯続きます。「活火山」をずっと「休火山」にする力は放射線以外にはありません。また術後には、テープで固定したり、サイズの大きいケロイドや関節周囲のケロイドの場合コルセットを装着して動きを制限することで速やかに赤みが消退し、休火山になって行きます。
これら「手術+放射線治療+術後固定(後療法)」の3つどれが欠けてもダメなのです。形成外科と放射線科の経験豊富な専門医による治療と患者さん自身の努力があってこそ最高の結果が得られるのです。
しかしながら真性ケロイドの場合、術後すぐに白くて平らな状態になって100%完治という訳には行きません。マグマのある体質自体が治る訳ではないからです。術後も部分的な再発、すなわち一部にかゆみが生じたり、赤く盛り上がったりする部分的な火山活動が断続的に見られるのが普通です。定期的な通院で保存的な治療を併用しながら、ほぼ安心出来る休火山になるまでに通常3~5年の期間がかかります。

手術+放射線治療+術後固定(後療法)

「肥厚性瘢痕(瘢痕ケロイド)」の治療:ケロイド体質ではない方の場合

肥厚性瘢痕(瘢痕ケロイド)の場合、原則放射線治療は必要ありません。マグマを持っている体質ではないからです。しかし、術後のきちんとした固定は必須です。

通常固定期間は術後約3ヶ月間です。
術後の傷が赤い間は動きによって形状が変化する時期です。この間の厳重な固定は大変重要で、結果の半分を決めると言っても過言ではありません。特に関節周囲など動きの激しい部位の場合は着脱式のコルセットの装着が必要です。
帝王切開の傷跡や顔などへは「接着スプリント」と呼ばれるスポンジやシートなどを直接貼ることで引きつれの再発を防ぐことができます。

手術+術後固定(後療法)

bottom of page